ご近所に見守られる中、工事は続く

コンクリート掘りが終わってから3日間は、仕事で暗くなってきてから帰宅するので、よく進行状況が分からない。一応、毎日夜8時くらいにIさんから連絡が入り、今日はここまで進んだ、という進行状況を教えてもらう。明日はペンキ屋さんが来るよーとか、コンクリートを流すから踏まないでねーっとか。あっという間に5日間が過ぎ、工事も折り返し。

お向かいさんも、毎晩、夕飯の差し入れを持ってきては、進行状況を聞いてくれる。我が家は割りと下町なので、ご近所付き合いはちゃんとある方だと思う。

そういう意味ではセキュリティー面がバッチリだけど、面倒だなーっと思う事も多い。


京都に住むのは大変だ、と言う人も多いし、ワタシもそう思う事もあるのだけど、私は生まれ育った家に住み続けているので、ご近所さんも小さな頃から知ってくれている人達ばかりなので、わが子を見守る、的な思いで見てくれてのかも、と思う。

3年前までは両親もこの家に住んでいて、「嫁にも行かず、親のスネかじり」みたいな目で見られてた感じだったのが、1人でこの家に住むようになってからは、「頑張るなー」とか、「1人で大丈夫?」みたいな応援モードにシフトしてきた印象すらある(気の毒がられてるのかもしれないけど)。

私がこの家に住み続けているのは、第一に家賃が安い(マンションみたく更新料とかも無い)という事だけど、近所に住む人が家族ぐるみで知っているという安心面、みたいなものも凄く大きいと思う。

昔は知らない人ばかりの中で暮らす方が楽だと思ってたけど、1人で居ると、漠然とした安心感って有難いなーっと思う事、多いです。

工事が始まった!

かくして、工事は始まった。前日の夜は熨斗付きの洗剤を持って、「騒音でご迷惑おかけします」とご近所へ。あぁワタシも大人になった、と実感。こういう昔は絶対に嫌だった事が、出来るようになるのですねぇ。「お互い様なんだから、気使わなくていいのに」という温かいお言葉をかけられながら「あー、始まっちゃった」と他人事のように思う。大丈夫か?ワタシ。

初日は車庫のコンクリートを電気ドリルで掘り返す作業。こーれーが、うるさいの何のって。それと凄い埃!!!我が家は隙間だらけの家なので、家中が砂埃で被われる状態。もうリアル「砂の女」by坂口安吾の世界で、初日の工事が終わった時点で、家の中を見て呆然としてしまう。

ガレージの床を掘っている様子
ガレージの床を掘っている様子

Iさんの話では初日でこのコンクリート掘り起こし作業は終わるハズだったのだけど、思ったよりずっとコンクリートが硬くて2日がかりになってしまう、との事。どうせ、掃除してもまた埃だらけになるから、と何を触ってもジャリジャリする家でもう一日過ごす事にする。

電気ドリルを使うのに、車庫の電源だけでは無理だから家の中の電源を貸して欲しい、と言われ、家の中のコンセントに付けたのだけど、部屋の暖房を付けるとヒューズが飛ぶのですよ。

かくして隙間だらけで風邪がピューピュー吹き、砂埃の舞う中、コート着ながら過ごすという、シュールな2日間だった。


次の日、仕事に出かける前に、「どう考えても家に帰って全部の部屋を拭き掃除するのはムリ」と、母にSOSを出して、朝、家を出た。その日の夜、仕事から帰ったら、「キャー!」と歓声を上げるほどにキレイに片付いていた。拭き掃除だけでなく、片付けまでしていてくれた。

我が母は、料理はさておき(本人曰く、やる気になれば美味しく作れる、らしいが)、掃除と裁縫は素晴らしく上手なのだ。そう、私に全く備わらなかったこの2つの家事については、母の前ではひれ伏すばかり。

ワタシはモノを捨てる事がチョー苦手なので、整理整頓が凄く苦手なのです。どっかにあるハズなんだけど、どこにあるかは分からない、みたいな事ばかりで、自分で自分に呆れる事も多い。けど、なかなかモノって捨てられないのです。

保健所訪問その3,その4

水場、床、壁、天井などの大きな設備についての問題はクリア出来た。3、4回目の保健所訪問では、細かな設備についての問題をこなしていく。

例えば、扉付きの食器棚が必要、と言われるのだけど、お店をやるわけでなし、食器は無いので食器棚なんか必要無いです。と言っても、そこはお役所。必要なもんは必要。と言う事で、「調理道具入れ」という名目の、プラスチックの収納コンテナを置く事で、了承してもらう事にした。扉付き食器棚の必要性は、口に触れる物への、鼠や害虫からの接触を避ける、という趣旨なわけだから、これで大丈夫。


元々、砂糖や小麦粉などの材料は、密閉式のコンテナに入れて保管するつもりだったので、いっそのこと全部、コンテナ収納にしてもいいな、と思い、図面に収納庫(プラスチック)と記入。保健所に提出する図面にはサイズは勿論、材質も必ず記入しなければならない。

あと、脱衣所を確保しなければならないのだけど、これは、住居スペースの中のどこかであればオッケーとの事で難なくクリア。さらに、

  • 家の中の洗面所と工房の中の手洗い場に消毒設備
  • 冷蔵庫の中に温度計
  • フタ付きゴミ箱

など、実に細かな規定をクリアすべく、図面にも書き込んでいく。

工務店さんと打ち合わせ

I工務店のIさんから「工事、ちょっと先に仕事が色々入ってるので、先にするならかなり先になってしまう。でも、すぐやってもいいなら来週からだったら出来る」との連絡が入る。

えーーー!来週(なんと3日後)か数ヶ月先か。

ううううううううー。「来週でお願いします」腹くくりました。大丈夫か?まだ保健所の書類審査通ってないのに。


次の日、ガス工事の方が現場を見に来られ、Iさんとあーでもないこーでもないと相談しながら、色々と決めていってくれる。

ワタシは自分で描いたヘナチョコ図面と、買いたいオーブン、レンジを、ガス屋さんに見せながら説明。ガスオーブンはガスの配管がちょっと難しいようだ。

でも、何とかお金かからない方法で、お願いします!と懇願。ワタシの独立に、「凄いなー」「頑張るなー」「大変やねー」と、ノセられながらも、「とにかく、安く!」という事を要所要所にアピールしながら話を進めていく。Iさんも「おっしゃ、安く出来るように何とかしたるわ!」という心強いお言葉。

私は、この後も何度もI工務店にして良かったと思うことになる。

保健所訪問その2

2回目の保健所訪問。今回は、前回窓口で対応してくれた、ちょっと厳しい人では無く、ワタシの住む学区を担当するSさん。

これから何度も通う事になる保健所では、Sさんにアポを取って、尋ねていく事になる。

Sさんに図面を見せ、最初に来た時に指摘された壁や天井の材質などの確認と最大の難点である床の排水の確保もする、という旨を伝えた。

で、ここで問題。私はジャムとお菓子を作る工房を作りたかった訳だけど、Sさん曰く、お菓子は「菓子製造許可」が必要で、ジャムは「缶・瓶詰め製造許可」が必要です。との事。ワタシは菓子製造許可だけ取れば、ジャムは作れると思っていたので、ちょっとビックリ。

ジャムは製造許可すらいらず、家の台所で作って売ってもいい、という地域さえあると聞くのに、ワタシの住む地域は結構厳しいようだ。

そして、菓子製造と瓶詰め製造の2つの許可を取るには、それぞれ菓子製造用のシンク瓶詰め製造用のシンクが必要との事。「2槽式シンクでいいんですよね」と言うワタシに、「いいえ。それぞれ独立したシンクを2台、という事です」とSさん。

「独立したシンクが横に2つ並んでていいんですか?だったら2槽式と変わらなくないですか?」と言うと、「いいえ。出来れば別の場所にコッチは菓子用、こっちは瓶詰め用、というふうに分けて置いて欲しいんです」

えーーーーーー!!!!無理無理無理———。たかだか7m2の場所に手洗いとシンク2つなんて置く場所無いですーーー。と頭を抱える。すると、Sさん、「あくまで今言ったのは理想的な設備で、もし既にシンクを手配されてるのであれば、2槽式のシンクの左側を「菓子製造専用」にして右側を「瓶詰め専用」で、という区切りを図面に付けて頂ければ結構です」と。な、なるほど、一気に歩み寄って頂き、感激だわ。


しかし、この後も事あるごとに「菓子製造」「瓶詰め製造」の2つの許可を取る、という事で問題が多発する。

作業スペースにしても、「菓子用」「瓶詰め用」を別々に確保せねばならない。大きい作業台を1台置けばいいやー、と思ってたのだけど、その区切りを付ける為に、小さな作業台を3台置く事にした。1台は菓子用、1台は瓶詰め用、もう1台は包装用。

Sさんの説明によると、製品を製造する場所と、それを包装する場所とは、ちゃんと分けないといけない。との事。

複数の人が働く食品工場では、異物混入を防ぐ為にもそういう規定が必要と思うけど、私は一人でやってくわけで、製造と包装を同時にやる事は無い。ワタシの中ではジャムを作る日、お菓子を焼く日、包装する日、と日を分けてやってくつもりだったので、作業スペースを分けなくても問題無いと思ってたのだけど、そうもいかないみたいだ。


結局、菓子製造だけでも、2台の作業台は必要だったわけね、と思いながら、消しゴム片手に何度も何度も、図面に作業台のサイズを変えながら書き込んでいった。