キレイを鑑賞。

キレイ 「キレイ-神様と待ち合わせした女-」シアターBRAVAにて鑑賞。再々再演、という事で、名作と言われている松尾スズキ作のミュージカル。私が松尾さんの舞台よりクドカンの方が好きだ、と言うと、それはキレイを見てからいいましょう、と言われた事があって、次回あったら絶対行こう、と思っていたのでした。そして、その意味が分かった。凄い、凄いです。何だ、この壮大な物語は。最後、ちょっと感極まって、目頭が熱くなりました。松尾さんのお芝居で、こういう感情になったのは初です。
 全ては表裏一体。キレイとケガレ、バカと賢さ、善と悪、喪失と再生。登場人物が多いのだけど、渾然一体となってラストに繋がっていく。松尾さんの中に垣間見える、善や悪や差別の中にある矛盾へのスタンスが、いつも居心地が悪くなる。それは私の中にも差別や偽善があって、それ笑ったらアウトだから、というような踏み絵を踏まされている気持ちになって、モヤモヤするというか。障害のある人や何かの被害者に対して、可哀相と思われたいと振舞ってるところ、ちょっとあるでしょ、でも見透かしてるからねーみたいな、そんな理不尽な、というような表現を正面きってこられるのです。いや、うーん、それは思ってても、しまっておきましょう、というようなところを不意に突きつけられると、戸惑ってしまって、あれ、これ深層心理として私の中にもあるのか、そんなはずないわ、でも何か居心地悪いわ、と。
 キレイ、はそういう居心地の悪さというのは、ほんの少しずつ散りばめられてはいるのだけど、それよりもやっぱり再生の物語、という印象が強くて、休憩挟んで4時間近いお芝居だったのだけど、あっという間で、最初の10分くらいで、これは凄い事になりそうだな、というゾクゾクした気持ちになった。
 キャストも全て素晴らしく、初演のキャストと比べると、初演のもどうしても見てみたくなって、思わず初演のDVDをポチっとしてしまった。多部未華子ちゃんは「ふくすけ」の時の印象とすごく似てたなぁ。久々の生の田辺誠一さんもたまらん。ふくすけの時にはあんまり印象に残らなかったオクイシュージさんが今回は特に素晴らしかった。舞台の演出も、凄い世界観で、日本のミュージカルというジャンルでは今まで見た中でベスト3に入ります。荒唐無稽なお話で、何でこんなに感情移入できるのか不思議なんだけど、チケット代以上のものを見せてもらったなぁ。たぶん、初演を生で見てたら、欠かさず松尾さんのお芝居には行かなくては、くらい信者になっていたかもしれない。
 1階席の真ん中の真ん中だったので、凄く見やすかったのだけど、右隣の人は携帯のバイブが動き、左の人は1幕も2幕も途中でカバンから飴だかチョコだかを出してカサコソ食べ始めるという、不運なめぐり合わせでしたが、周りに迷惑かけてると思ってないんだろうなぁ。あと、遅れてくる人は必ず前の方の席で何人もいるのだけど、なーーんーーーでーーーっと、舞台の始まりに集中したいのにーっと、いつもいつも思います。

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