「the bee」鑑賞。

  NODA MAP番外公演「the bee」鑑賞。場所はOBP円形ホール。小さい劇場なので、舞台が物凄く近い。瞬きも分かる距離というのは久々だ。そして野田さんのお芝居も久々。松さんの「罪と罰」以来だろうか。大体、野田さんのお芝居って全然関西に来ない。東京では完売でも、関西では余ってたりする事が多い上、当日券あります、と大きく入口にあったので、ちょっと心配してたけど空席は無かった。
 70分っていう短いお芝居のハズなのに、見終わったら3時間近いお芝居を見た疲労感なんですけど。演劇の底力を見せられた気がする。こういう小さな劇場でのお芝居、もうちょっと見るべきかもしれない。
 筒井康隆の短編が原作なのだけど、脱獄犯に人質にされた被害者の家族とその脱獄犯とその脱獄犯の家族の話し。暴力には暴力を、被害者が加害者に。普通のサラリーマンが、狂っていく様を野田秀樹が全力で演じる。まぁ、野田さんは常に全力感あるけど、今回は見てるこっちがシンドイくらいの振り絞り感。

 役者も小道具も2役3役を兼ねる。急須はアイロンになり、ゴミ箱は野球帽を乗せれば子供になる。役者の巧みさと観客の想像力。創意工夫で豪華な舞台セットや凝った小道具の必要性を全く感じさせない。指に見立てた鉛筆をポキっと折るだけで、血のりも使わず、今そこで指を包丁で切られた痛々しさを感じさせる。

 宮沢りえちゃんは、初の汚れ役という事だったけど、汚い言葉を使ってもひどい扱いを受けても、やっぱり最後まで美しい。スラーっと伸びた白くて細い足をギリギリまで見せられると、同性でもため息もので凝視しちゃう。そして池田成志さんが出てくると、俄然安心感が(笑)。何でしょう、この人の、出てきただけでその場が一瞬で胡散臭くなる独特の存在感。コンドルズの近藤さんは初演と同じキャストという事だけど、私はコンドルズ以外の舞台上で見るのは初めて。身の軽さはさすがだけど、野田さんも負けて無いところが凄い。
 
 やっぱり天才なんだろう。こんなお芝居、野田さんにしか作れない。関西に来ないなら、東京まで見に行くべきかもしれない、とさえ思わせる圧倒的なオリジナリティ。ニューヨーク公演やロンドン公演のお客さんのインタビューをyoutubeで見て、あぁやっぱり響くお芝居なんだなぁと。

↓こちらは英語バージョンの動画。宮沢りえちゃんの役は野田さんが演じ、野田さんの役はイギリス人女優のキャサリン・ハンターが演じてます。

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